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東京高等裁判所 昭和33年(ネ)1528号 判決 1959年7月15日

控訴人(原告) 磯貝貞司

被控訴人(被告) 井上友次郎

主文

本件訴訟は昭和三十四年五月二日の経過とともに控訴の取下があつたものとみなされて終了した。

昭和三十四年五月十二日付をもつてなした控訴人の口頭弁論期日指定申立後の訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人訴訟代理人は昭和三十四年五月十二日付上申書をもつて本件控訴事件につき口頭弁論期日の指定を求める旨申立て、その事由として陳述した事実の要旨は、控訴人訴訟代理人神谷安民は本件控訴事件につきさきに指定のあつた昭和三十四年二月二日午前十時の口頭弁論期日には差支のため出頭できなかつたので予め電報をもつて当庁に延期の申立をなし出頭しなかつたところ右申立は却下され、かつ同期日には被控訴人訴訟代理人も出頭せず休止となつた。そこで控訴人訴訟代理人はその後三月内である同年同月十六日当庁に対し同日付の口頭弁論期日指定申立書を普通郵便をもつて提出した。したがつて本件訴訟は未だ終了していないので、こゝにその訴訟手続を進行するため口頭弁論期日の指定を求めるというのである。そして証拠として甲第三、四号証を提出し、証人神谷安民の証言を援用した。

被控訴人訴訟代理人は控訴人の本件申立については意見はない。甲第三号証は裁判所の受付印の部分の成立を認めるがその余の部分は不知、甲第四号証は不知と述べた。

当裁判所は弁論を本件訴訟が既に終了したか否かの点に制限した。

理由

よつて按ずるのに、本件記録によれば、本件控訴事件については昭和三十四年一月十二日その口頭弁論期日を同年二月二日午前十時と指定され、同口頭弁論期日呼出状は被控訴人訴訟代理人岡田勝には同年一月十四日、また控訴人訴訟代理人神谷安民には同年同月十七日それぞれ送達された。そして同控訴人訴訟代理人は同年二月二日当庁に対し電報をもつて口頭弁論期日の延期を求めたが、当裁判所は同日期日を開いた上右申立を却下し当事者双方不出頭により同期日は休止となり、かつその三ケ月の法定期間内にそのいずれからも本件につき口頭弁論期日指定の申立をなした形跡がなかつたので本件控訴は民事訴訟法第三百六十三条第二項第二百三十八条により同年五月二日の経過とともに取下があつたものとみなして処理したことが明白である。

控訴人訴訟代理人神谷安民は右期日後法定の期間内である昭和三十四年二月十六日当庁に対し本件控訴事件につき口頭弁論期日指定の申立書を提出したと主張し、自ら証人としてその証言中で同人は本件控訴事件の訴訟代理人として控訴人主張の右日時に昭和三十四年二月十六日付期日指定の申立書を直接当庁の書記課へ持参して提出したか又は普通郵便で送つたかは現在判然しないが提出済であり、現にその期日指定についての希望日まで記入した右申立書の控(甲第四号証)が自分の記録綴に綴られてあつて右申立書を提出したことは間違いない旨供述しているけれども、そのような控があるからといつて、ただそれだけでは右申立書が果して当庁に提出されたかどうかはわからないし、提出したことは間違いないとの同証人の右供述は同証言中の他の部分と対比してみてもたやすく採用しがたく、他に右申立書が当庁に提出されたこと及びその他に右二月二日の期日後三月内に当事者のいずれかから本件につき口頭弁論期日の指定の申立がなされたことを認めるに足りる証拠はない。

してみれば、本件控訴は昭和三十四年二月二日から三月の経過により同年五月二日をもつて取り下げられたものとみなされ訴訟は終了したものというべきであるから控訴人がその後昭和三十四年五月十二日に至つて本件訴訟手続の進行を求め、その口頭弁論期日の指定を求めたのは失当である。

よつて当裁判所は本件訴訟は右昭和三十四年五月二日の経過とともに控訴の取下があつたものとみなされて終了した旨の終局判決をなすべきものとし、かつ前記期日指定申立後に生じた訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条及び第九十五条を適用して主文のとおり判決する。

(川喜多 小沢 位野木)

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